神にそむいても
「まさかのBL?」
真ん中のほうの席からボソッと声が上がると、すぐ近くの女子が小さくキャッと叫んだ。
「はい、残念ながら違います。
BL、つまりボーイズラブ、同性愛の話ではありません。
まぁ、先生は天武(テンム)天皇と実は兄弟でそういう関係だったとかだったら楽しいなと常々妄想しますけどね」
センセーの茶目っ気たっぷりな発言に笑い声が湧く。
「今でこそ、三親等間で結婚はできないっていうのはみなさんも知ってると思いますが、
この時代、おじさんと姪、おばさんと甥はもちろん、腹違いの兄妹(姉弟)までは許されていました。
だから、そのあたりの間柄までは決して近親相姦ではありませんでした」
「マジで!?」
「はい、マ・ジです」
近親相姦なんてコトバに、みんな色めき立っている。
思わずつぶやくように発した男子の言葉に、センセーは落ち着きつつも茶目っ気たっぷりに若者コトバを使って返答する。
「だけど、同じ母親から生まれた関係はやはりこの時代でも罪になります」
――同ジ母親カラ生マレタ関係ハ
ヤハリ コノ時代デモ罪ニナリマス――
そんな昔でもやっぱりそうなんだよな……。
頭がクラクラする。ガンガンする。
不自然に思われないように両手で頭を抱えながら、髪を後ろに流した。
何度も何度も。