神にそむいても
「それで、天智天皇は父親は舒明(ジョメイ)天皇、母親は皇極(コウギョク)天皇。
そして、天智天皇と全く同じ、この両親から生まれた妹がいます。それが間人皇女(ハシヒトノヒメミコ)です。
彼女と恋愛関係にあったんじゃないかと言われています」
教室が一層ざわつく。
兄妹……。
胸が痛い。
この場所からいなくなりたかった。
「彼女の夫は叔父でもあった孝徳天皇でしたが、」
「マジか!」
「え!?」
「ダンナがオジさん!?」
「それって不倫!?」
「キモッ!!」
ザワザワザワザワ。
教室中が一層騒がしくなる。
ザワザワザワザワ。
まるで、私の胸に多数の虫でも這っているかのような不快感が一層深まる。
「そうね、今でいうところの”不倫”ね。
もっとも、ふたりの関係は結婚する前からの関係ではあったんだけどね。
でも、間人皇女が嫁いでからもその関係が切れることはありませんでした」
「うわっ!」
「それダメでしょ」
「ゲスだ、ゲス~」
「マジ、キモっ」
方々から挙がる非難の声。
私はいたたまれなかった。
世間ではそういう評価が普通なのだ。
そして、私は普通じゃないんだってことをイヤってほど実感させられる。
そう、私はきっと普通じゃないんだ。