神にそむいても


中3の梅雨時期。

母親は夜勤で私たちは二人きり。
リビングで期末テストの勉強をしていた。


「うわっマジか!?」

一息ついてジュースを飲みながら、スマホを見ていた智が驚いた。


「なになになに?」

「吉田(ヨシダ)、カノジョとキスしたんだって」

「え、吉田くんって智と同じクラスの?カノジョいたんだね」

「うん、他校のコ。塾で知り合ったって言ってた。こないだ付き合い始めたばっかなのに。はぁ~」

「そういえば、キミちゃんも高校生のカレシとチューしたって言ってた」

「マジか~……」


 本当に今思っても好奇心だったんだと思う。

「智は?」

「え?」

「キス……したことあるの?」

さすがに兄妹でお互いのそういう体験をきくのは気恥ずかしくって、
うつむきがちに訊いてみた。


「はぁ!?」

少し怒ったようにも感じる反応に顔を上げると、そこには顔を真っ赤にした智がいた。

自分と一緒だっていう安心感と、智がまだ誰にもとられてないっていう恋に似た感覚に、
多分少しヘンなテンションになってしまったのだと思う。


< 28 / 233 >

この作品をシェア

pagetop