神にそむいても


う~~~ん……。

カオになにかがはりついているような感覚がする。
クチの中もザラザラするし。
まぶたが重たくて開かない。

「ぷっぷっ」

吐き捨てた感覚は土のようなものだった。


重いまぶたをこじ開けるようにして視界を広げると、
私は地べたにキスをしている状態だった。

ここどこよ……。

体を起こそうとするんだけど、泥のように土と一体化してるみたい。
もういっそのこと、この土と同化してしまうんじゃないかと思うようなだるさ。


ん!?
くすぐったい!!

再び目を閉じてじっとしていたら、ほっぺたを撫でてる感覚がする。
少しザラザラとした心地。


幾分軽くなったまぶたをゆっくりと開けると、そこには三毛の仔猫がいた。

「うにゅあ~ん」

ノドをゴロゴロと鳴らして頬ずりしてくる。
毛がふわふわしていてくすぐったい。

「くすぐったいよ~」

そのコを捕まえようと他人の腕のように重たい手をなんとか動かすと、
するりと抜けて見えなくなってしまった。

あれ?


よろよろとしながらもやっとの思いでなんとか立ち上がり、
少しだけ距離を置いたそのコの姿を認める。

「ミャア」

心地よい鳴き声。


ゆっくりと抱きしめて、自分の格好を確認する。

研修旅行で寄ったお店で借りた衣装だ。

土でずいぶん汚れてしまっているので、
左手で三毛猫を持ち、空いた右手で私はそれをパタパタとはたく。

クリーニング代とられるだろうな。


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