銀色の月は太陽の隣で笑う
7 始まりは、昔々

相変わらずの雨の中、トーマはいつになく早い時間に、それもなんの前触れもなく唐突にパチっと目が覚めた。

まれにあることだと割り切って二度目の眠りにつくこともできたけれど、今日はそんな気分にもならないくらいに完全に目が覚めてしまっている。

なんだろう……。こういう時は、トーマが旅人生活で培った直感的なものが、何かを伝えている可能性がある。

例えば、盗賊が荷物を盗もうとしていたり、危険な野生動物が近くにいたり、雨雲が頭上に広がっていたり。

ほとんどの場合悪い予感であるのだが、今はそのどれも当てはまらない。なにせ野宿中ではなく、建物の中にいるのだ。

とりあえず体を起こしたトーマは、一応荷物の無事を確認してから、部屋の中をぐるりと見渡す。何も異常はないはずなのに、なぜだか落ち着かない。

ひとまずベッドから下りて、大きく体を伸ばしながら階段に向かう。

一段また一段と下りながら考えていると、階下に微かな違和感を覚えた。

今は朝とは言っても早朝には遅すぎるし、どちらかといえば昼よりは朝に近いくらいの時間帯。それなのに、なぜか一階はシーンと静まり返っている。
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