銀色の月は太陽の隣で笑う
難しい顔で唸るトーマを見ながら、少女はパンをちぎって口に運ぶ。
「だからさ、やっぱり思ったんだ。今回書くお話は、僕の勝手な想像じゃダメなんだなって」
もぐもぐと噛み締めていたパンを飲み込んで、お茶も一口飲んだところで、少女はようやく手を止める。
「僕は、自分が面白いと思ったものを書きたいんだ。僕自身が、これだ!って思ったものをね。だから今回は、どうしてもキミの話が聞きたいんだ」
困ったように首を傾げる少女に、トーマは笑顔を向ける。
「難しく考えないで。全然特別な話じゃなくていいんだ。僕が知りたいのは、この森で、この洋館で、キミがひっそりと紡いできた日常なんだから」
そう言って、トーマは子供みたいに無邪気に笑う。
「それじゃあ早速だけど、聞いてもいい?」
何を聞かれるのかとドキドキしながら、少女はコクっと頷き返す。
「えっと、それじゃあ……」
トーマは、手にしていたノートをパラパラと捲った。
トーマが持っているノートは随分と古いもののようで、いつもバッグに入れて持ち歩いているからなのか、こうして外で使っているからなのか、全体的に形が歪んでいた。