銀色の月は太陽の隣で笑う
辺りがすっかり暗闇と静寂に包まれた頃、固く閉ざされていた洋館の扉が、ゆっくりゆっくりと開いていく。
片目が覗くくらいの隙間でピタッと扉の動きが止まると、そこから恐る恐る外を伺う青みがかった銀色の瞳。
月明かりに照らされて見える範囲に目を凝らせば、昼間お茶を楽しむために準備したティーセットもバスケットも、当然のように自分が残して行った時のまま、テーブルの上にあった。
更に視線を巡らせて、月明かりに照らされた敷地と、闇夜に溶け込んだ森との丁度境目に、少女はその姿を見た。
地面に座り込んだ自分の隣にバッグを下ろして、月明かりを頼りに何やら一心に手を動かしている青年。
どんなに目を凝らしてみても、この位置からではそれ以上は見えない。
少女は隙間を広げて、まるで猫のようにそろりと体を外に出すと、足音を忍ばせてテーブルまで歩いていく。
青年は未だ顔を上げることなく一心に手を動かしていて、少女の存在には気がついていない。