銀色の月は太陽の隣で笑う
5 優しさが交差する野イチゴジャム


「雨、凄いな……」


独り言のように呟かれたトーマの言葉に、ルウンは顔を上げて窓の向こうに視線を移す。

屋根裏に唯一ついている小さな窓は、打ち付ける雨ですっかり視界が曇って何も見えない。

昨日から降り続いている雨は、今朝になっても止むことはおろか、勢いが弱まることすらなかった。


「この時期、いつも。……時々止んでも、またすぐ降る」


ポツリポツリと言葉を返したルウンは、何も見えない窓から視線を外して作業に戻る。

これを期に思い切って壊れているものは処分しようと決めたルウンは、冬用の薪にするためバラす物を分けて、まだ使える物だけをトーマに運び上げてもらっていた。

それでも、また適当に置いていってはせっかく確保したトーマの寝る場所がなくなってしまうので、整理しながら置いていく。

徐々にそこは、雑多な物置から、“部屋”と呼んで差し支えない状態に変貌を遂げていた。


「ルン、この机はどこに置く?セットで椅子もあるけど」


トーマは、持ってきた机をルウンに見せて指示を仰ぐ。

雑多に放置されていた物達は、埃を落として綺麗に拭きあげると、どれも新品とまではいかないが、それなりの輝きを取り戻していた。
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