It's so hopeless


「ゼロー?
いつもの本読んでよ」



ちびっこに言われ、はいはいと適当に返事をするゼロ。



「ハイは一回っ」



ちびっこはゼロに厳しい。ゼロはきちっと敬礼をして“ハイ”と返事をする。



ちびっこの尻に敷かれるゼロの滑稽さに、私は思わず吹き出してしまった。





「ソラ…笑うなって」




情けないゼロ。
こんなんで本当に伝説の悪魔なのだろうか。






悪魔と子供が戯れる微笑ましい光景。





「――それじゃ、私帰るね」




ゼロと子供たちの声を背に、私は時計塔を出た。




振り返ると、ゼロと子供たちが手を振っている。






小さく頬笑み、前を向く。次はどこを当たろうか…。





茜空。

夕闇の訪れる前に。








まだ鼻の奥、仄かに薔薇の香りが残っている。
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