この夏が終わっても

「む、無理だよっ…。
そんな、っ…たくさんの人前で歌えないよ…!」

歌は嫌いじゃない。
でも、カラオケで高得点を出した事なんて一度もない。歌唱力は、どう考えても普通以下。


「私なんかが歌ったら…。
きっと、大ブーイングだよ……っ。」

みんな楽しみにしてるお祭りなのに…。
私の歌声なんて聴いて喜ぶ人、いない。

そう思った私に、清香ちゃんが言う。


「上手い下手なんて、関係ないの!
大好きな歌に気持ちを込めて歌う。
どんなに良い歌だって、1番気持ちを込めて歌える人に巡り会えなきゃ…。誰の心にも響かないんだよ?」

清香ちゃんに軽く額をデコピンされて…。
私は、カラオケボックスで将ちゃんに言われた言葉を思い出した。


「別に上手い下手なんか関係ねぇだろ?好きな歌を思いっきり歌えばいいんだって。」
「俺は、お前の歌詞のセンスも歌声も好きだったけどな〜。」

あの言葉の意味、やっと今…分かった。
< 111 / 139 >

この作品をシェア

pagetop