にゃんとも失せ物捜査課です
「おい。お前どこまでついてくるつもりだ。」

 質問しても返事は返って来やしない。

 ほんの数十分前………。


「じゃお邪魔してゴメンね。
 美雨ちゃん。
 私は帰るから、ごゆっくり〜。」

 ニコニコ…というより、ニヤニヤ笑いながら帰っていく麗華。

「だからそういうんじゃねー!」

 そう言っているのに振り向きもせず、手をひらひらとさせて麗華は帰って行ってしまった。

「終業時間は過ぎてる。俺らも帰るぞ。」


 そう告げたのが何分か前。

 それからずっと犬飼の後をついてくる美雨。

「帰るぞ。
 って一緒に帰るぞって意味じゃないんだ。
 帰っていいぞってことだ。
 分かってるのか?」

 どんなに言葉を重ねても美雨からは何も返ってこなかった。

 仕方なく犬飼は携帯を手に取って、電話をかけた。
 何度目になるのか分からない、うんざりした視線を美雨に向けながら。

 電話の相手はじいさんだ。

「俺。犬飼だけど。
 なぁ。こいつ行くとこ決まってるだろ?
 単身寮か?」

 電話の向こう側から、じいさんの困ったような声が聞こえる。

 しかし元来のたぬきおやじ。
 本当に困ってるのやら…。

「それが寮は嫌なようでな。」

 どんだけ贅沢者だよ。

「じゃ当分はホテル暮らしか?」

「そのつもりだったやもしれん。」

 クイッと引っ張られ振り向くと上着の裾が美雨に引っ張られた。

「なんだよ…。」

「どうした?」

 こちらの異変にじいさんも心配そうな声を上げた。
 さすがに心配しているのは形だけではないらしい。

「こいつずっと俺の後をついてくるんだ。
 軽くホラーだぜ。」

 うんざりした声を吐き出せば、いつもの陽気なじいさんの声に戻って笑われる。

「ハッハッハッ。
 ワンちゃんずいぶんと気に入られたようだな。
 美雨ちゃんを頼んだよ。」

 そこまでの声を届けると電話は一方的に切れ、憤慨することになった。

 やっぱり俺に丸投げかよ!
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