にゃんとも失せ物捜査課です
 犬飼は男の子に代わって話し始めた。

「里親を探そうと思っていたんです。
 ネットには里親登録サイトもたくさんあって。」

 しばらくの沈黙。

 それはそうだ。
 予想もしていなかった仔猫。
 簡単に飼うとも言えないだろう。

 沈黙を破ったのは平井さんだった。

「そう。分かったわ。
 でもやっぱりこんなには飼えない。」

 平井さんの言葉を聞いて、男の子はガックリと肩を落とした。
 それでも平井さんは微笑んでいる。

「2匹はどなたかに飼ってもらいましょう。
 1匹はあなたが世話してくれるんでしょ?」

 え?と顔を上げた男の子が、ぱぁーっと表情を明るくさせた。

「一気に孫も出来たみたいだわ。」

 苦笑しつつも、どこか嬉しそうな平井さんにこちらも嬉しくなる。

 よほど嬉しかったような男の子は興奮気味に話し出した。

「俺、大雅(たいが)です。
 寅年だからタイガーって。
 あの、よろしくお願いします!
 俺、仔猫の世話頑張ります!!」



後日ーーー

 結局のところ里親サイトに出した赤ちゃん猫を引き取りたい人はたくさんいて、その中でも引き取りに来れる人を選んだ。

 そして、3匹とも貰われて行った。

 どうしても飼いたいと言ってくれる人がいて、飼う予定だった最後の1匹も貰われていった。

「なんだか急に寂しくなるわね。」

 1匹は飼うと決めた平井さんだったが、そんなにも飼いたいと言って下さるんだったらと最後の1匹を譲った。

 こんなに望まれて飼っていただけるなら幸せね。
 と微笑んだ顔はどこか寂しそうで、本当に猫を愛しているんだなぁと痛いほど伝わってくる。

「俺、まだこれからもミケに会いに来てもいいですか?」

 仔猫を譲る時は男の子もその場に来ていた。
 もちろん最後の仔猫の時も。
 平井さんの決断に男の子も納得していた。

 そして、今日平井さんに会えたら、そう言おうと心に決めていたのだ。

「えぇもちろんよ。」

 寂しげだった平井さんが優しく微笑んだ。
 すると男の子がもじもじと言いにくそうに口を開く。

「あの…猫見たいっていう友達もいるんだ。
 女の子で優しい子で…。」

「あらあら。それは楽しみね。」

 ますます柔らかくなる平井さんの顔は本当にお孫さんを見守るおばあちゃんのようだ。
 男の子は平井さんの言葉に顔いっぱいの笑顔を向ける。

「いいんですか?」

「えぇ。もちろんいいわ。」

 ミケと男の子の一件は見守っていたこちらがほんわかするほど、いい結末で安心した。

 ただ、もう一件の猫事件は………。
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