君のことが気になって仕方がない
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私は今、校舎裏に呼び出され中。複数の女子達にグルリと囲まれてます。
「間宮実里(まみや みのり)! あんた、バスケ部のマネージャーだからって、調子にのんないでよ!」
「そーよそーよ!」
はぁ、またそれ? 毎日毎日同じことで呼び出さないでほしいんだけど。
しかも、このコ達一年生だよ? 私一応二年生で先輩のハズなのに、思いっきりタメ口ですか。
「別に調子にのってませんっ」
「調子にのってんじゃん!
『中村君』ばっか気にかけてさー!」
「そーよそーよ!」
「そんなことないってば!」
もーう、うんざり。部活中に絡んでこないでよー。
毎日絡んでくるこのコ達は、バスケ部員の一年生・中村君のファン。
中村君は、高校で初めてバスケを始めたにもかかわらず、センスをかわれてエース候補に。
女子の人気も、ごらんのとおり上々。
背が高くて、顔も清潔感溢れたイケメン。
モテる要素があるのは、確かにわかるよ。
それでも、私にとってはただの可愛い後輩であって、恋愛の対象ではないんだけどなぁ。
「マネージャー。ここにいたんですね」
「あっ。中村君」
噂をすれば、中村君登場。ユニフォーム姿のまま現れた。
中村君が現れたから、ファン達が動揺してる。良かった、助かったかも。
「あのさぁ、君達。どうしたらマネージャーに絡むのをやめてくれんの?」
困った様子の中村君が、私の代わりにファンに問いかけてくれた。
中村君ならファンを説得出来るかも……
「この人のことどう思ってるのか、中村君がうちらにハッキリと教えてくれたら、やめてあげるっ!」
「そーよそーよっ!」
え"!?
中村君が、私のことをどう思ってるかって!?
「ふーん……わかった」
わかったって……中村君、答えるの? 私のこと、どう思ってるのかを? ウソでしょ? どうしよ、助かったと思ったけど変な方向に行っちゃったよ。なんかごめん。変なことに巻き込んじゃって。
でも中村君、どんな風に答えるんだろう……私のこと、何とも思ってないでしょ?
って、そう言い聞かせても、こういうのってドキドキしちゃうもんだね。
私も、ファンも、固唾(かたず)を飲んで見守る中、中村君はゆっくりと口を開いた。
「俺は、マネージャーのことを……好きだと思ってるよ。これでいい?」
…………………………へ?
今……『好きだと思ってる』って……言わなかった?
「だから、これ以上マネージャーを困らすようなことをしたら、許さないから」
中村君、真剣な表情。その場しのぎで言ったような雰囲気じゃなさそう。
てことは中村君……本気で私のことを?
「い……いやぁー! 信じられなーい!」
「そーよそーよぉー!」
ファン達、泣きながら去って行っちゃった。
待って、私も『信じられなーい!』なんだけど!
中村君が私を好きって……えぇーー!?
その後、私は恥ずかしさから、中村君とロクに会話が出来なかった。