桜時雨の降る頃
体育館裏にそっと近づいていくと
確かに、女の話し声がする。
陽斗に“しーっ!”と人差し指を口の前で立てながら更に近寄るとハッキリ会話が聞こえてきた。
「毎日一緒に登下校するとかさ。ガキじゃないんだから考えなよ」
コレは、多分女子部のキャプテンだな。
それに気付いたらしい陽斗と目を合わせてコクンと頷く。
「そうだよ、朝霧兄弟だって迷惑でしょ。子守じゃあるまいし」
違う先輩が付け足している。
何トンチンカンなこと言ってんだ。
「……迷惑って彼らがそう言ったんですか?」
雫の声だ。
思いの外、口調はしっかりしてる。
泣かされてるわけではなさそうなことに少しだけホッとした。
「言ってないけどそう思ってるに決まってるじゃん。特に陽斗くんは優しいし」
俺?と目を丸くしてる陽斗に苦笑する。
いきなり会話に登場させられて驚いたんだろう。
「幼なじみだからって、調子乗らないでね。
まさかとは思うけど、どっちかと付き合ってたりしないよね?」