桜時雨の降る頃
笑いながらこちらに向かってくる先輩たちを俺たちは側の壁に寄りかかりながら、腕を組んで待っていた。
キャッ、と悲鳴に似た叫びが飛ぶ。
「朔斗くん、陽斗くん? どうしたのぉ?
もうとっくに帰ったんじゃ……」
今、自分たちがしてきた言動を知られたくないんだろう。焦ってるのがミエミエだ。
猫なで声なんて出されても全く情状酌量の余地なし。
「センパイ、後輩イジメは良くないんじゃないっすか?」
俺が一部始終を聞いてましたよ、と言わんばかりに口を開くと
陽斗がダメ押しでその事実を突きつける。
「俺たち、雫のこと邪魔になんて思ってないですよ」
「いじめてたワケじゃないってば〜。あれよ、ちょっと態度悪かったから指導してただけよ?」
指導ね。
フッと俺は鼻で笑った。
「いや、俺わりとハッキリ聴こえましたよ?
邪魔だとか、近づくなとか、俺らが頼んだわけでもないことをベラベラと言ってましたよねぇ?」