桜時雨の降る頃
話を聞いていたようで、雫の顔は怒りと悔しさでいっぱいだった。


もうやめて、と雫が先輩に言ったものの
まだ口元に嫌な笑みを浮かべて勝ち誇ったようにしているキャプテンに俺の怒りが振り切れた。


「いーかげんにしとけよ、性悪女」

俺の暴言によりその場の空気がピシッと固まったのもよく分かった。

が、そんなのには構わず雫に帰るぞ、と促す。

先輩たちには散々脅し文句を浴びせてから、俺と陽斗で雫をその場から連れ出した。







帰り道、雫の言葉に少なからず俺はショックを受けた。


離れたほうがいい、とか

男の子だったら良かったのに、とか。


俺たちといることが、雫を苦しめてしまうのかと思ったら


…………ショックだった。



俺は怒ることしか出来なかったけど、陽斗は違った。


離れていこうとする雫を走って引き止めたのは
陽斗だ。

そのままの雫でいいって
素直に諭せる陽斗は、すげぇと思った。



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