桜時雨の降る頃
「まぁ、ほんのちょっとデートしてただけだろ? 有る事無い事ウワサたてられるまえに、釈明会見しとけよ」

すでに今晩これからのお喋りタイムでますます噂に尾ひれはついてくるだろうけど。


「和菓子屋見つけてさ。雫好きそうだなーと思いながら戻ったらちょうどいたから、つい」


「連れてっちゃったと」


「そう。せっかく学校で雫が妙なやっかみ受けなくなってきてたのに」


「お前は王子なんだから、行動には気をつけろよ」


別に怒っていたわけではないから、笑いながらソフトに言った。

けど、俺の言葉に何か引っかかったのか
陽斗の表情が少し消えた。


「……俺、王子なんかじゃないのにな」

陽斗が陰で王子と呼ばれてるのは実は本人も知っている。


「もっと普通に雫といたい。何も気にしないで。朔斗だってそうだろ?」


陽斗は“普通に”と加えていたけど

雫といたいっていう言葉に俺は息を呑んだ。

それは女としてじゃないのか?って考えが過ぎったからだ。




< 137 / 225 >

この作品をシェア

pagetop