ヒステリックラバー
「初めまして、銀翔街通り連合会広報の堀井愛美と申します」
挨拶した女性が直矢さんの顔を見た瞬間目を見開いた。
「直矢? 直矢が担当なの?」
「愛美?」
直矢さんも女性を見て目を真ん丸に見開いている。
「あの……お知り合いですか?」
私は微妙な空気になった二人の間に割って入った。
「ええ……まあ……」
「僕の大学の同期生ですよ」
直矢さんは私の顔を見ないでそう言った。その態度に私は嫌な予感がした。
「お久しぶりです」
「はい……お久しぶりです」
直矢さんの挨拶に愛美と呼ばれた女性も笑顔を作った。
「早速ですが打ち合わせをしましょう。事務所にご案内いたします」
「よろしくお願いします」
前を歩き出した愛美さんの後ろから直矢さんが歩き出した。私はそんな二人に違和感を覚えながらもそれ以上追求をしなかった。
打ち合わせは滞りなく進み、事務所の前で愛美さんに見送られた。
「そうそう、パレードを例年より長くやるということでしたらここの駐車場を待機場所として提供します」
愛美さんの申し出に直矢さんは「ありがとうございます」と無表情で言った。
「戸田さん、ここの駐車場も念のため写真をお願いします」
「わかりました」
私は駐車場の写真を撮るため二人から少し離れてカメラを向けた。
「元気そうでよかった」
背後で愛美さんが直矢さんにそう言うのが聞こえた。
「どうしてるかなって思ってたの」
「今まで僕のことを気にかけたことなんてなかったのに?」
直矢さんの珍しく怒りのこもった声に思わず振り向いた。