泥酔ドクター拾いました。
「ねぇ、藤代さん。聞いてる?」

先生の笑顔に見惚れていて、上の空だった私は、先生の声で現実に戻ってきた。

「よかった。本気で怒っているのかと思った」
そう言いながら、メガネを外して笑う大和田先生。

いつも病院では眼鏡をかけている大和田先生の、そんな姿を見たのは、泥酔事件のあの夜以来初めてで。あの夜にみた長いまつ毛や口元の小さなホクロ、それに穏やかな表情の寝顔が鮮明によみがえってくる。

そして、メガネを外した笑顔が私の鼓動を早くするなんてこと、目の前の先生はきっと自覚がないのだろう。


「ここのマンション、1階は1K、2階が1DK、3階が1SLDKになってるんだよ。だから1階は8部屋あるし、2階は4部屋、3階はこの部屋と隣の2部屋しかないってこと。多分、2階の2部屋分が3階では1部屋になっているんだろうね。あっ、もちろん藤代さんが言ったみたいに共有部分とかキッチンカウンターのタイルもオシャレだよね。」

私の胸の鼓動のことなんて気づくわけもなく、先生は話を続ける。

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