泥酔ドクター拾いました。
□□

「どこに行くんですか?私、明日も仕事なんですけど…」

不機嫌そうに助手席に座った彼女がぼやくように呟く。


「大丈夫、藤代さんの家まで送るから。」
「送るって、大和田先生、私とマンション同じじゃないですか」

「知ってる」
「もう……」


不機嫌そうだけど、屋上で話をしていた時よりも随分表情が柔らかいと思えるのは俺の気のせいではないようだ。



病棟の廊下を歩いて、ナースステーションまで連れていった俺は彼女に帰り支度をして、職員通用口で待つように伝えた。俺も急いで帰り支度を済ませると、彼女は律儀に職員用の出入り口で俺を待っていてくれた。

先に帰ることだって、出来たというのに。

自転車で帰ると言った彼女を半ば無理矢理送ると言って、俺の車に乗せると、マンションとは反対の方向へと車を走らせたのだった。

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