泥酔ドクター拾いました。
「お疲れ」

彼女のために買った栄養ドリンクを空をぼんやりと見つめていた彼女のおでこにあてる。

「きゃっ!!」

俺の存在に驚いたのか、はたまた栄養ドリンクの冷たさに驚いたのか。
ここが、夜の病院の屋上ということも忘れているような小さな悲鳴をあげた彼女に、俺はおでこにあてた栄養ドリンクを今度は彼女の目の前に差し出した。


「なんだ、大和田先生かぁ」
気の抜けたような呟きと安堵のため息をつきながら、藤代さんは栄養ドリンクを両手で受け取る。

「俺じゃ、不服かよ」
「別にそんなんじゃないですけど」

さっきまで泣いていたことを隠していたいのだろう。藤代さんは小さく一度だけ鼻を啜ると、視線を泳がす。
そんな彼女の様子を見ながら、俺は彼女の隣に腰掛けた。


採血のおかげか、それとも緊急招集のコールのおかげか、今日一日でなんとなく藤代さんが俺に対して作っていた壁のようなものが少し無くなった様な気がして、嬉しくて思わず頬を綻ばせる。
< 78 / 225 >

この作品をシェア

pagetop