泥酔ドクター拾いました。
「えっ…、見てたんですか?」

明らかに困惑した口調で尋ねる藤代さんに、俺は小さく頷く。

「見るつもりはなかったんだけど」
俺は、言い訳でもするかのように伝える。

目を離せなくなったなんてことは、口が裂けても絶対に言えない。

「ナースになって5年も経つのに、こんなことで落ち込んだり、泣いたりしてダッサイと思うでしょ?」
自嘲するようにして肩を竦めて藤代さんは、かすかに笑う。


「あのさ、少なくとも俺はそんな藤代さんが魅力的だと思う」

彼女の様子に、一瞬にして熱くなってしまった俺は、無意識に彼女の両肩を掴んでいた。
真っすぐ見つめた先には、彼女の青みがかった独特な色の真ん丸な瞳が揺らいでいる。
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