オフィス・ムーン

「…大輔と出会って…ずっと一緒に居たかった」
「何言ってるんだよ。俺達は、夫婦だ、ずっと一緒だろ、」
「無理しないで、私を捨てればいいじゃない。貴方のおかぁさんも、マユさんを嫁だって言ってるんだし。」
「…誤解しないで欲しい。俺は、マユと食事したり、たまには飲みに行ったけど本当に身体の関係とか無いんだよ。ただ、これからは、もう会わないし、電話やメールもしない。絶対に。約束する。俺は、馬鹿だから、マユが色々大変な事が解って、相談に乗って、たまには遊びに行ったりしてなんとかあいつを励ましたかったし、役に立ちたかった…だけどそれが、あいつにとってもお前にとっても良くないって今はっきり解った。１番大事なお前をこんなに傷つけて、俺は何やってるんだって…自分に腹が立って…」
「…本当？」
「…嘘じゃないよ。元カノの前でいいかっこしてしまったんだ。このまま行くと情と愛情を間違える所だったかも知れない。」
「私は大輔の何？」
「１番大事な人。俺の妻…一生一緒にいたい人だ。俺は、もしかしてその大事な人にもう、愛想つかされたかな？まだ間に合うよね？信じて、やり直せるよね」
「…暫く…考えてもいい？」
「…そうだね…凄く傷つけたんだ…時間かかるよね。」

遥は年休をとり実家に帰る事にした。

「…遥やつれたわね、何かあったの？」
「ううん。忙しかったから疲れてるの。」
母の優しい言葉に泣きそうになる。
「ね、お父さんって、モテた？」
「あの人は無口で愛想無しだからモテないわよ。でも、あんな真面目なひとでもふらふらした事あったわよ」
「ふらふらって？」
「浮気よ」
「嘘！お父さんが？」
「会社の後輩の女の子でバツイチの子持ちがいて、悩みとか相談に乗ってやってるうちに、情が移ったみたいで、相手の女の子もすっかりお父さんに依存しちゃって…私が気が付いて、お父さんに迫ったの、私かあの女か今すぐ決めてってね。」
「…え、おかぁさん勇気あるね。私なら言えないわ…で、どうなったの？」
「お父さんが同情してもあの女の子を救えない事を悟ったのと、人の事世話してる間に大事な家族を傷付けてたこと反省したから許したの」