オフィス・ムーン
「遥…大丈夫か?」
「…ええ…熱は下がったみたい…今日は病院に行くわ」
「一緒に行くよ」
「大事な時期なんでしょう?いいわ。病院ぐらい一人で行けるから。」
「俺が1番大事なのは遥だから。一緒に病院に行くよ」
「私がわがまま言って大事な大輔の仕事の邪魔しちゃったらいけないもの。本当に大丈夫よ。今日は気分も大分いいみたい。昨日食べてないから、ちょっとふらつくぐらいかしら。」
遥が力無く笑った。
「いや、病院に着いていくよ」
「不自然だわ」
「何が?」
「不自然な優しさね」
「な…何が…どこが不自然なんだよ」
「…やましい事あると亭主はやたら優しかったりするんだって」
「じ、自分の妻が病気だって時に優しくしない旦那なんか、そのほうが変だろ!」
「何怒ってるのよ」
「怒ってないだろ」
「大輔…自分の胸に聞いてみたらいいわ。」
「…遥…」
 遥はゆっくりドアを閉めた。
「待てよ、何処行くんだよ。」
「だから、病院よ。市民病院に行ってきます」
「…俺…」
「…いいよ。大丈夫だから。ヨーグルトありがとう。さっきいただいたわよ。…お弁当と朝ごはんのサンドイッチテーブルの上にありますからね」

遥は振り向きもせず出て行った。
大輔は遥が何か気付いているのを確信した。

遥は 病院で思いがけず 風邪の他に妊娠2ヶ月と診断された。

大輔と遥の赤ちゃん

遥は大輔にどう話すか考えていた。赤ちゃんが出来て嬉しいはずなのに不安で仕方なかった。 大輔が喜ばなかったら…

遥は大輔の母の病院に行った。
「…おかぁさん」
「あら…遥さん」
「…私は、大輔に…嫌われたみたい」
「…遥さん、大輔は遥さんも、私も、マユさんも嫌いになんてなりませんよ」
「おかぁさん、マユさんってだれですか?」
「マユさんは、マユさんですよ。大輔のの嫁さんになってくれる人じゃないの?」
「おかぁさん、大輔の嫁は、私でしょう?じゃあ、私は一体なんなんですか?」
「やぁねぇ…遥さんは、遥さんじゃないの。何時もお世話になっています。」
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