*ΒaD boY,SaD girL*
[date]
初めての私服デートを喜ぶ奈々子は、やっぱり新鮮でかわいいって思った。
そして話題の映画を見た。
そういや里沙が見たいって言ってたなぁ・・・なんてボンヤリ思いながら見ていた。

「・・・くん」

ハっと我に帰る・・・

「哉未くん?気分わるい?」

奈々子が心配そうに哉未の顔をのぞきこんだ。
今ふたりは近くの店でランチ中だった。

『わり。何だっけ?』

作り笑いしながら言うと奈々子はホッとした様子だった。


―昨日―

『日曜バイト入ったから』

服に着替えている里沙を背にテレビを見ながら言う。

『はぁ?ないって言ってたじゃん』

里沙の不満な声。見なくても顔をしかめていると分かる。

『先輩に代われって言われたら断れねえじゃん』

顔を見たら、きっと目が泳ぐからテレビを見ながら平静を装う哉未。

『・・・最悪。まじシネ』

カチー・・・ン・・・

その日は何故か里沙の呟いた言葉にカチンと来た。

『お前クチ悪すぎ』

『お前とか呼ばないでよ!!!』

お前と呼ばれて更に声を張り上げる里沙。

『マジ何なんだよ!?バイトだっつってんだから、しょーがねえじゃん!!』

『逆ギレ?ムカつく・・・帰る』

里沙は眉間にしわを寄せつつ、そう言うとバッグを肩にひっかけ出ていったのだった。


〔胸くそわりぃ…〕

煙草を灰皿に押しつけながら昨日の事を思い出していた。

『奈々子ちゃん・・・店でよっか』

微笑んでみせた。
小さく頷く奈々子を横目にレジへ向かい会計を済ますと店を出た。
*
*
*
*
『嘘・・・』

『あれ哉未だよね・・・』

「・・・」

そこにはホテルへ入っていく二人の姿を遠くから見ている二人の影があった。


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