*ΒaD boY,SaD girL*
[Tear]
立ち尽くす里沙と宇田。
冷たい風が通り抜けた。
温かいものが頬を伝うのを感じた。

『最悪・・・見ないで・・・』

里沙が宇田に背を向けながら涙を拭う。

「里沙・・・」

宇田の声が聞こえたと思ったら気がつくと里沙は宇田によって抱き締められていた。

『ちょっ・・・宇田?』

里沙の焦る声。

「これっきりだから・・・。」

宇田の掠れた声。

『宇田・・・』

宇田の胸に抱き寄せられたまま呟いた。

「叶わなくていいんだ。俺は・・・お前と哉未が幸せなら・・・だから・・・」

宇田の表情は見えなかったが少なくとも里沙は宇田の気持ちに気がついてしまった。

『うん、ありがとう宇田・・・』

里沙は俯いた。

哉未を好きな里沙
里沙を好きな宇田

どうしてこんなにも上手くいかないんだろう。

『あたし・・・宇田を好きになれば幸せになれたかな?』

里沙の言葉に宇田は目を見開く。

「違うだろ・・・」

宇田がためらいながら口を開く。

「哉未を好きじゃない里沙は里沙じゃないだろ?」

なんだか胸が苦しくなった・・・あたしは強いのになのに
涙が溢れるのを止められなかった。

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