*ΒaD boY,SaD girL*
[NEON...]
里沙は長い間、外のネオンを眺めていた。
宇田も何も言わなかった。

『帰ろっか』

里沙は沈黙を破るように口をひらき椅子をひいた。
このままネオンを眺めていたら、いろんな事を考えてしまいそうで嫌だった。
二人は、しばらく黙ったままで歩いていた。
突然、里沙が立ち止まる。

『・・・』

いつか見たホテル。
哉未と奈々子が入っていったホテル。
自分でも気付かずに足をとめてしまっていた。

「里沙・・・行くぞ」

少し前を歩いていた宇田が眉を歪め里沙をホテルから遠ざけようとする。

『哉未、あの子と付き合うのかな?』

里沙がホテルのピカピカ光るネオンを眺めながら呟いた。
自分でも自覚しないうちに出た言葉だった。

「・・・」

思わず黙り込んだ。
宇田は痛々しく里沙をみつめた。

『別に気になるとかじゃないよ。もう関係ないし』

宇田の沈黙に里沙が振り向き、いつものポーカーフェイスのまま言った。

平気・・・。
大丈夫・・・。

『でも・・・』

手に力がこもる。

『あの手は、もう二度と、あたしに触れる事はないんだね・・・』

じんわり目頭が熱くなってそしてネオンが少しぼやけた。


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