*ΒaD boY,SaD girL*
[I tell]
こんな寒い所に、どれだけの時間いただろう。
宇田が音楽をかけはじめたのか中から時たま賑やかな音がかすかに聞こえた。
それでも中に戻る気になれず、この場所に哉未は1人いた。

何本めかのタバコを地面に押しつけながらポケットからタバコを出す。

『くそ・・・』

ボックスは空で哉未は荒く髪をかきあげながら眉を歪めた。
タバコを吸いながらなら冷静に考える事が出来たがなくなると急に苛立ってくる。
〔重傷だな〕
哉未は心の中で自分を嘲笑しながら俯いた。

きー・・・

ドアが開く音がして・・・

『・・・哉未?』

背の後ろから聞こえた声に哉未は目を見開いた。

自分の名前をよぶ懐かしい声・・・『り・・・さ』

哉未は、ゆっくりと後ろを振り返った。
そこに立っていたのは正真正銘、里沙の姿だった。

『どうしたの』

先に話しかけてきたのは里沙だった。
里沙は迷う事なく哉未の隣りに座った。
哉未は驚いた。
付き合ってた時のように・・・当たり前のように自分の隣に里沙が座ったから・・・。

『・・・外の空気すいに』

里沙が話しかけてきた事に内心動揺しながら平静を装った。

里沙は『そう・・・』と呟いただけだった。

『・・・』

これほど緊張したのは初めてかもしれない。

どんな時だって適当に交わしてきた。

『哉未。この間は追返してごめん・・・』

沈黙を破るように里沙は謝った。

“この間”病院の事だろう・・・

『あ・・・いや。俺が悪かったから・・・』

哉未はギュッと手を握り締めると上擦った声で言った。

『里沙・・・俺、お前に話したい事があるんだ・・・』


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