俺のことなんて思い出さなくていいから
「マジでいたし。」


「……………連絡してくる。」



目的を達成したのにも関わらず何故か浮かない顔の網走を残し、鴟擾は女性を一瞥した後部屋を出ていった。



「え、網走、なにあれ?」


「鴟擾さん、わたし達に用があったんじゃないの?」


「いつになく不機嫌でしたけどぉ。」


「おいパシリ、説明しろ。」



「い、いっぺんに言うな!俺だって来たくなかったんだからな!」



鴟擾の態度と矢継ぎ早な質問にヤケクソになりそうなのを何とか堪え、網走は深呼吸して事の経緯を話始めた。



「本部長に呼び出し食らったんだ。本部長の同期の知り合いの娘が、今朝家から居なくなったから探してくれと。それで聞き込みしていたら、ミニパトに乗せられているとこを見たっていう目撃者がいたんだよ。管轄と目撃者の話からあんたら二人だと思って来てみたら案の定だったって訳だ。」


「へー、大変だな。本部長直々にしかも管轄外だなんてさ。」



「お前ほどじゃないさ。俺をパシリ呼ばわりする相方と組まされる方が気の毒だからな。同期として心が痛いよ。」



相方に苦労しているのは自分も同じだが、度合いが違い過ぎるから同情さえする。



「貴方達が来た理由は分かったわ。だけど、いくらなんでも子供じゃあるまいし。探していたのがこの人なら、わざわざ貴方達が探さなくてもよくない?今朝なら尚更。」


「そうですよねぇ。見るからに大人だし、居なくなったの家なら家出の方が可能性としては高いしぃ。」



「ただ居なくなっただけなら本部長も本部長の同期も、ここまでしなかったさ。こちらの女性の名前は淡守紬(アワガミ ツムギ)、旧家のお嬢様だからみんな神経質になっちゃったんだよ。まさかの鴟擾さんまでな。」



「マジで?!」

「大マジ。」



網走の疲れた雰囲気が事実だと物語る。



「でもなんで旧家のお嬢様が家出?しかもこんなあっさり見付かる上に無言な訳?」


「あたしらちょー困ったんですよぉ。」



「それが」

「紬っ!」

「紬。」

「紬さん。」



網走の言葉を遮った上に押し退けながら紬を呼んだのは、少し神経質そうな婦人と厳格そうな紳士、温厚そうな男性の三人。


その後ろでは、鴟擾が硬い表情で居心地が悪そうにいる。



「怪我ない?大丈夫?ま~やつれているんじゃないの?」


「少し落ち着きなさい。みなさん娘が失礼した。果妙、紬、行くぞ。」


「お送りします。」

「結構だ。」



鴟擾の申し出を拒絶するように断り事情説明はおろか自己紹介すらなく、紬を奪い去るかのごとく婦人と紳士は出ていった。



「何なんだあいつら。」


「ちょ、各務さん失礼ですよ、まだ紬さんのお連れの人いるんですから。」



「いえ、こちらこそ無作法で申し訳ありませんでしたね。先程の二人は、紬さんのご両親で淡守晟俟瑯(アワガミ セイシロウ)と淡守果妙(アワガミ ハタエ)、私は礼礁京豊(レイショウ ケイト)と申します。紬さんの婚約者という立場になります。紬さんを見付けていただきましてありがとうございました。後日またお礼に伺わせていただきます。急ぎます故、今日はこれで失礼致します。鴟擾くん、下までいいかな?」



「はい。こちらです。」



礼礁はにこやかな微笑みで、硬い表情のままの鴟擾を連れて出ていった。
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