俺のことなんて思い出さなくていいから
「まるで嵐ね。色々聞きたいこと山ほどあるけれど。保護対象もいなくなっちゃったし、これ以上は係長に怒られるから戻るわ。」


「後日報告よろしくですぅ。」



須戎と豹童は後ろ髪を引かれる思いながら警らに戻っていった。



「さてパシリよ、続きを聞こうではないか。」


「もー突っ込まないぞ、俺は突っ込まないぞ!」


「気持ちは分かる、分かるぞ網走。さあ、切り替えて頼む。」



横柄な態度の各務にヒートアップしそうな網走へ深呼吸を促して、潭穆は場を静めにかかる。


手慣れたものだ。



「こほん。まず最初に言っておくと、紬さんには十年前からの記憶がない。」



十年前、何者かに乱暴されて以来、過去の記憶も家族のことも、自分の名前さえも分からなくなってしまった。



「相当ショックだったんだろうな、感情も感じなくなってしまったそうだ。今も療養中らしいんだが、あの通りだ。」


「ご両親があんな態度だったのも今なら頷ける。」




「確かに、そりゃそうなるわな。で?鉄仮面がえらく嫌われているみたいだったが、知り合いか?」


「さあそこまでは……。本部長から聞いたのは、旧家のお嬢様で乱暴されて感情を失っているから注意してくれ。服装に特徴があるからそれで探してくれってだけだったからな。」



確かに鴟擾の態度の豹変ぶりには網走も驚いた。


鉄仮面と揶揄されるだけの表情の変わらなさの定評は普段からあるのだが、動揺と必死さが探している間にかなり見受けられたから。




「でも何なんだあの毛糸。気持ち悪い笑み浮かべやがって。」



「毛糸じゃなくて京豊ですから。優しい感じでよかったじゃないですか。婚約者って言っていましたし、お似合いだと思いますけど。」



「でも俺は好かない。」


「各務さんの好みは聞いていない。」




「まあまあまあ。野生の勘ってことで。………居なくなった理由は分からないし、お礼に来るとも言ってました、け・ど。俺達はもう会うこともないだろうし、この件はここまで!俺達も報告書作りますよ。溜まっているんですから。」


「珍しく始末書じゃないんだな。」




「うるさい!俺の始末書はな、人助けの勲章なんだよ。」


「どこがですか。単に被害を拡大させているだけじゃないですか。」


「子供にはヒーローだって人気なんだぞ。」


「そう自慢するなら子供にリスペクトされるような大人になってください。」



「そんなのなくったって俺は俺でいいんだよ、なんてったって俺の人生なんだから。」


「各務さんだけの人生じゃなくなっているんですよ。組まされている俺も始末書なんですからね!」



「じゃお前も勲章たくさんあるじゃねぇか。良かったな。」


「良くないですよ!」






「……ああ、………………帰ろう。」



自分のあるべき場所へ。




敬意を払って貰える人物になりたいと、常々思っているのだがなかなかそうはいかない。


ただ、こうだけはなりたくないと思う人物ならたくさんいるんだがな、などと同期の苦労を哀れみつつ網走は本庁へと戻った。





*****




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