箱庭の世界
「空、ただいま」
繰り返し同じ言葉を紡ぐ。
ちゃんと理解出来るようゆっくりと。
「空?ななだよ」
「………なな?」
「うん。ただいま」
「…………んー、お、おかえり………」
やっと理解してくれたそらにゆっくりと頷けばにこりとぎこちなく笑い返してくれた。
決して焦点の合わない目が泳ぐ泳ぐ。
「……あ、な、なな。……………お、お、おそ、遅かった、ね………」
「ごめんね。忙しかったの。寂しかった?」
「…………う、う、うう、うん」
この子は二階堂空。
人間離れした美しい容姿を持つんだけど、サヴァン症候群という病気のせいで人とのコミュニケーションが図れない男の子。
空の場合はちょっと特殊で何故か生まれついての戦闘狂。
理性とか一切関係無しに本能の赴くままなんでもかんでも壊してしまうからこうして閉じ込めざる終えない。
これは人間達の為ってこともあるけど第一は空の為。
人間でも物でも壊してしまう空は周りから破壊神って恐れられていて、外には出してあげられないから。
「あー、うー、うー、んー」
「空、どうしたの?」
突然空が唸り出した。
こういうことはよくあることだから別段驚きはしない。
「空、大丈夫。大丈夫だから」
「うー、んー、うー、うー、あー、あー」
なるべく空の目線の高さにまでしゃがみ、しっかりと空の目を合わせて逸らさないようにしながら。
「空、空、聞こえる?空、ななはここに居るよ。大丈夫。離れていかないからちゃんと私を見て」
「んー、な、なな?」
「そうだよ。ななだよ」
「なな、なな、なな、なな、なな」
壊れたように、囈言(うわごと)のように何度も何度も繰り返し呟き続ける空。
手探りで私を掴もうと躍起になってる。
その手をしっかりと繋ぎながらそらの目を覗き込む。
空の右耳に付いているブラックダイヤモンドのピアスと左耳に付いているダイヤモンドのピアスが真っ暗な部屋の中、きらりと輝いた気がした。