カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
その日から、ふたりの距離は急速に縮まった。
モニカは毎日のようにリュディガーのための菓子を特別に焼き、それを執務室に運んだ。
それまではワゴンを置いただけで去ってしまっていたが、彼から一緒にお茶を飲んでいかないかと誘われ、ティータイムを共にするようになった。
その中で『読書が好き』だとモニカが話すと、リュディガーは書斎の本棚を開放してくれた。好きなものを自由に読んでいいと。
皇太子の持つ貴重な書物の数々にモニカは目を輝かせ、時間の許す限り書斎にこもるようになった。
すると、そのうちリュディガーも仕事道具を持ち込み書斎で過ごすようになった。
黙々と本を読み続けるモニカと、黙々と書類の決裁を続けるリュディガー。ときどき本に書いてあるわからないところをモニカが質問すると、リュディガーは丁寧にそれを教えてくれた。
会話はそれぐらいしかなく書斎はいつも静かだったが、モニカはこの時間をとても心地よくとても大切に思っていた。
ときおり本から顔を上げて、テーブルで書類に向かっているリュディガーの顔を覗き見るのだが、彼もこちらを向いていてふと視線が合ってしまうことがある。そんなときは恥ずかしくて顔が赤くなってしまうのだが、そのくすぐったい気持ちがモニカには嬉しくてたまらない。
書斎の本はゲオゼル語のものが多く、チェルシオの文字に慣れたモニカにとって読むのは簡単なことではなかったが、彼の母国語なのだと思うと積極的に学びたい気持ちが湧き出た。
この夏だけで、モニカはゲオゼル語の読み書きがだいぶ上達したほどである。