カタブツ皇帝陛下は新妻への過保護がとまらない
やがてふたりは一緒に早朝の散歩もするようになった。きっかけは、リュディガーが誘ってくれたからだった。
シュゲル城の庭は広い。国立公園と森林豊かな狩猟場も有している。公園の入口近くには鍵のかかった門があり、その奥にある木々に囲まれ整備された小道は皇太子専用の散歩道だった。
他者が一切立ち入らない散歩道は清涼で静かで、薄紫のアルタエアやピンクのグラジオラスが自然のままに咲き誇り、花好きのモニカの目を楽しませた。
「ここに来ると気分が落ち着く。ときどき息抜きに訪れていたけれど、他のものを入れたのは初めてだ」
ゆっくりと小道を歩きながらそう話したリュディガーの言葉を、モニカは嬉しさと緊張の混じった思いで聞いた。
(私、だけ……特別に入れてくださったってこと……?)
うぬぼれだろうかと自重しながらも、リュディガーの特別な存在になれたような気がしてソワソワしてしまう。
しかも彼は足場の悪いところではモニカに腕を差し出し、優美に、かつ自然にエスコートしてくれるものだから、十三歳の乙女が夢心地になってしまうのも無理はないだろう。
ふたりでいる時間はさほど多くはない。休暇に来ていてもリュディガーは公務で出かけることもあるし、来客に謁見を求められることもある。モニカもエラたちの面倒を見たり、エルヴィンや母たちに誘われて街へ出かけることもあった。
そんな中で共にお茶の時間を取り、書斎で過ごし、早朝に散歩をするのは、ふたりの大切な秘密の時間になっていった。