オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「これ以上野放しにしたら、どこに行くかわからんからな」


そしてぎゅっと私の手を握り、すたすたと店に向かって歩きだす。

向居と手をつなぐのは慣れたと言え、まだちょっと気恥ずかしい。
何気なくお店の窓ガラスを見ると、そろって浴衣を着て手をつないで歩く私たちの姿が目に入ってしまう。
どう見ても恋人同士にしか見えない…。

大嫌いな同期と、まさかのデート…ちがうデートごっこ。

ごっこよ。
なのに私、どうしてこんなにドキドキしているの…。
向居のことが大嫌いだった数日前の私が知ったら、いったいどう思うだろう…。


「なぁ、これやってみたくないか?」

「え…!?」


不意に向居が足を止めた。
それは、お土産物屋さんと工房が一緒になっている店だった。
向居が見つめていたのは、店の扉に貼ってある張り紙だった。


「絵付け体験??」

「そんなにお眼鏡に叶う物が見つからないなら、自分で作ったらどうだ?」

「ええええ、絵付けなんて、私そんな絵上手じゃないし!」

「と言っても、このまま土産物屋だけ巡ったってロケハンの意味がないだろ? 他の楽しみ方も開拓しておかないと」


購買意欲旺盛でうっかりしていたけれど、まぁ言われてみればそうだ。
…ってもっともらしいこと言うけれど、単に私の土産物屋めぐりに付き合い飽きたからじゃないの??
なんてじろりとにらんでみるが、向居は素知らぬ顔で「じゃ決まりな」と店の扉を開けた。
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