オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「…向居…冗談はやめて…はなしてよ…!」


か細い声で絞り出す私に、向居はとろりと目を細め、ひとりごちるように言う。


「そんな可愛い顔で言われたら、なおさら離せない」

「……!」


向居の両腕が動き、私の背中に回った。
驚きと困惑に息をすることも忘れる私の首筋に向居が顔をうずめ、ほうと安堵するような吐息し、


「都」


私の名を囁く。


「都…」


その声には、欲しくてたまらなかったものをやっと腕の中にしまえたかのごとく、深い想いが満ち溢れているように聞こえた。
私は天井ばかり見つめていた。向居の熱に焼かれながら。

どれくらい見つめていたか分からない。気がつけば、向居はぐったりとして微動だにしなくなっていた。

耳をすませば…規則正しい吐息が、私の耳元をくすぐる。


「ああ…もう…」
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