オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

2



天然温泉のいいお湯から上がって気分も多少向上すると、湯上りの一杯が欲しくなったので、旅館近くのコンビニへ行くことにした。
すっぴんでコンビニ。向居が寝入った今、はばかる人目は皆無だ。

お約束のビールを買うと、店の一角に目が留まった。


「お、地酒販売コーナーある」


部屋にはさっき開けた日本酒があったけれど、ついつい手を伸ばしてしまう。

となれば、おつまみも…。
なにがいいかな、おつまみまで特産品が並んでいるので選ぶのもワクワクしてしまう。
たしか事前に調べておいたものでお酒に合いそうなやつがあったんだけどなー。

コンビニらしからぬ広い店内には私のような観光客がいっぱいいて、カップルとおぼしき男女の姿もチラホラ。


「これこれ、これ美味いんだって」


不意に男の人の声が聞こえて、おつまみを選ぶ私の手が止まった。
その声は、すっかり聴き馴染んでいた声に似ていた。
いや、似ているんじゃなかった。

当人のそれだった。

聞き間違えとは思い難い。
だって、何年も一つ屋根の下に暮らして毎日聞いていたんだもの。


基樹。
< 168 / 273 >

この作品をシェア

pagetop