オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
立ち尽くすことなく、再び商品棚の陰に隠れた自分を褒めたい。
もうパニック寸前だった。どうしてどうして? どうしてあの二人が、どうしてここに??

浮気相手の女―――確か飯田と言った―――が、久しぶりに聞く甲高い声で小馬鹿にするように言った。


「すごい、お土産までピックアップしてたんだ、あの人」

「まぁな。あいつ、そういうのも好きだからな。もうアラサーのいい歳なのに、若い子向けのかわいいのが好きなんだから、笑っちまうよな」

「ぷ、ウケるー! あの人いつまで自分が若くて美人だと思っているわけ? ほとんど三十でしょ? 確かにこのご当地デザインビール、パッケージはかわいいけど、おばさんが選ぶもんではないわよね」

「ってか、あいつの話はもういいじゃん。せっかくの楽しい旅行が台無しだ」


と、基樹が明らかな不快感をにじませて言う『あいつ』。
それは間違いなく、私のことだ。
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