オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
どくどくどく、と身体中の血が逆流するんじゃないかと思うくらい、心臓が高鳴っていた。

浮気だけでも卑怯だというのに、どこまで面の皮が厚いんだろう。
基樹は今回のために私が調べあげたリサーチを盗んだんだ。
浮気相手と楽しむために。

しかも、よりにもよって数ある私のリサーチ資料の中からどうしてこの街のものを選ぶかな。
私と行くことになっていた旅先よ?
私が基樹のために、って調べ上げた情報よ…?

動揺に激しく高鳴る心臓とは対照的に、頭はやたら冷静に働く。
基樹とケンカしてから頭に引っかかっていた点と点が、すらすらと線でつながる。

私と旅行に行くことは了承したものの、行程や宿泊先にはまったく口出ししてこなかった基樹。
旅行好きの基樹がああも関心を示さないのも不思議だな、とは思ったけれど、私を信じて任せてくれているんだなとばっかり思っていた。
けれどもそれは、私のまったくの能天気な思い違いだったんだ。

私との旅行に無関心だった挙句すっかり忘れ果てて、あまつさえ旅行が明日だと言われて悪びれるどころか急に怒り出したのも…そうかそうか、かわいい浮気相手と旅行することで頭が一杯だったからなのね。
なるほどなるほど、私との旅行の日取りが偶然にも浮気相手とのそれとブッキングしちゃったんじゃあ、そりゃあ焦って不愉快になるよね。

不愉快。
< 171 / 273 >

この作品をシェア

pagetop