オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
「お、逢坂先輩ぃい」
「な、なに……?」
「や、やっぱり本当だったんですね……! あんな『噂話』はガセだと思っていたけれど……!」
「ええ?」
「わあああ! 俺の憧れの逢坂先輩がぁああ! 俺、変わりませんからね! 結婚しても逢坂先輩は俺の永遠の軍師様ですっ」

慕ってくれるのはいいけれど、軍師様はやめて欲しいなぁあ……! と思っていたら、騒ぎに気付いた他の後輩達がやってきて、一人が「あ!」と声を上げる。
その一人につられて別の後輩も「ああ!」と驚愕の声を上げる―――私の左指に光る指輪に釘付けになって。

「ええと」

私は苦笑いを浮かべて、囲うようにして私を見下ろしている西君達三人を見回した。

「もう噂話で知っていると思うけど……私、その……婚約しました。相手は……その……同じ社の、向居柊介さんと」

絶叫と悲鳴と歓声と。

フロア中に男女のありとあらゆる声が響いて、上を下への大騒ぎとなり、そしてその騒動は間もなくして社内中に広がった。
つくづく平和な会社だ。

……私の平和は、しばらくは失われるけれど。


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