オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~
身体を起こしながら、身なりをそれとなく確認してみる。
大丈夫、衣服は乱れていない。
…かなり酔っていたけど、過ちは犯してなさそうだ…。


昨晩、部屋に戻る前に、腹立ちまぎれに休憩所で自販機の缶ビールを三本空けた私。

ほろ酔いになって部屋に戻ると、向居は一人放置されたのもなんのそので、健やかな寝息を立てていた。

いびきでもかいているなら失笑でもしてやったのに、寝姿すらも凛としていて面白くなかった。

いつまでも帰らない私のことを心配しなかっ
たのか、という腹立たしさも感じたが、酔いがまわっていて眠気が限界に達していたので、浴衣を適当に身体に巻き付けて布団にバタンしたのだった。

そして、こうして起こされた現在。

って、今何時? と枕もとのスマホを見ると六時。
私には十分早い時間だった。
通りで眠いはず。まだ寝ていたい…と目を閉じようとしたところで。


「行くぞ」

「…え?」


思わず寝ぼけ眼で見上げた私に、向居は器用に片眉を上げた。


「出かけるんだよ。早く起きろ」

「は?」


思わず聞き返す声も尖る。初春の朝、たしかにもう部屋は明るいとはいえ、行動するには早すぎる。しかもちょっと寒いし。


「散歩に行くんだよ。この近くに有名な寺があるのは当然調査済みだろ?」

「そこは今日ここを出たらいくつもり」

「今がいいんだよ。土産物屋とか店が開かないこの時間が」


と言う向居は、よく見れば、服に着替え終わっている。
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