それでもいいって、いったじゃん。
出会い。
出会いは、別に特別でも何でもない、いたって単純そのものだった。
夏の夕暮れ、午後18時30分。
近道をしようと公園の中を通った、ある日の事。


彼はベンチに浅く腰を掛け、前のめりになってそこにいた。少し離れた先にある遊具を、じっと見ていたのだ。

なにをしているんだろう。


そう思いはしたものの、蒸し暑いのもあり、その日は足も止めずに家路を急ぐ。


ただいまと適当に呟きながらドアを開け、靴を脱いで脱衣所へ向かう。


風呂場に勢いよく入ったらシャワーで体を流しシャンプーをして、湯船に使って一息つく。

これが私の帰宅してからの流れ作業。


そんな中でふと、彼の姿を思い出した。


特に目立ったことはないのに、私はどうしてこうも気になるんだろう。
悩みなんかしなくても、すぐにピンときた。


あの瞳だ。


孤独を嘆くようにひっそりと前だけを見ていた。
あの瞳に、私は惹かれたんだ。


潤むわけでもなく、多少乾いたような。
何かを背負いながら生きているけれど疲れてしまったと言わんばかりの、寂しい表情、息使い。


初めて見た人をそんなに考えるのも変な話だなと思い、私はいつも通り適当に食事した後布団について眠った。


朝が来るのが、それはそれは、待ち遠しいままに。








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