それでもいいって、いったじゃん。
彼は表情を変えずそのまま振り向くと、私のこともじっと見つめて、それから、
「そうだね。僕も、死んでもいいと思えるよ。」
と言って、うっすら笑みを浮かべた。
「文学少年だったんですか?」
時いたそれに、
「あなたこそ。」
と言ってきた彼は、初めて見た人間らしい顔だった。
お互いクスクス笑った後で、
間が空く前に飲み物を差し出す。
「どっちがいいですか?」
彼は、
「どちらでも。あなたが好きな方をとりなよ」
って笑うその目さえ、どうしてそんなに寂しそうなんだろう。
「え…私もどちらでも…」
と返すと、
「それなら同じ飲み物買っておいでよ。変な人だね」
と笑って、ああその顔が月に照らされて、私は夏の夜の罪深さを知る。