それでもいいって、いったじゃん。
どんな思いを掬って飲み干して、
抱えて、歩いてきたんだろう。


ズボンのポケットから取り出したタバコは次で最後のようで、彼はくしゃっと箱をつぶした。


私に興味のないあなた。
あなたを知りたい私。


そっか。このストーリーはきっと、
報われることはない。


始まったばかりの交わったばかりの話でもしっかりとそう思ったのは、
この異様な胸の痛みのせいだった。



突き刺さるような、握りつぶされそうなこの、言い表せない痛みのせいだった。


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