それでもいいって、いったじゃん。
「…そっか。気をつけてね。それじゃあ、7時に待ってる。また明日ね。」


少しの沈黙のあとで、当たり障りのない返し。

わざと深く聞かなかったんだろう。
そういうところは、お互いに察しがいい。


不安を残した笑顔を、彼は私に向ける。どうしても愛おしいのだから、離すことなんて到底出来ずにいた。


「また明日。」

優しく笑って手を振って、家をあとにする。

ああ、思い出すんじゃなかった。


< 44 / 88 >

この作品をシェア

pagetop