俺様副社長の溺愛秘書
「相談なら俺が乗る。」



尚輝の声に笑みを向けた。



「本当に何でもない。」


「陽輝じゃなく、俺に相談しろよ。」


「うん、大丈夫。」



にっこりと微笑めば、尚輝の視線が資料へと戻っていく。


相談なんてない。ただ――――



『モヤモヤが消えないだけだ。』



目を閉じて大きく深呼吸した。気持ちの切り替えが必要だ。



「朱里さん?」



閉じていた目を開けば、同じ様に二人が見ている。



『隠し事か?』



そんな言葉を言いたげな瞳が向けられている。



「ごめん、初めての大阪出張に緊張してるみたい。」


「「………。」」


「気にしないで、続けて。」


「「………。」」



二人の視線が向けられているが、気にしない振りをした。



「ちょっとお手洗い。」



席を立ち、お手洗いへと足を向けた。


お手洗いの鏡に映る自分を見つめる。



『平常心、平常心、平常心、平常心。』



呪文のように唱えてみた。
< 144 / 167 >

この作品をシェア

pagetop