俺様副社長の溺愛秘書
二人が資料を読んでいる席へと戻った。向けられた視線は一瞬だけだった。


内心、『ほっ』と息を吐きながら席へと腰掛けた。


腕時計へと目を向ければ、会議へと向かう時間が迫っている。



「副社長、陽輝、そろそろ時間です。」


「わかった。」

「了解。」



二人の声に席を立ち上がる。徒歩でも遠くない距離に大阪支社はあるようだ。


忘れ物がないかチェックして、副社長と陽輝の後ろをついていく。



「なんかいい。」



陽輝の言葉に顔を向ければ、前を歩く陽輝が振り返って私を見ていた。



「朱里さんの秘書がいい。俺も秘書にしたい。」


「余裕だな、陽輝。頭を切り替えろ。」



副社長の言葉は今の私にも当てはまる。気持ちを切り替えなくては―――。



「副社長、会議の後の懇親会に大阪支社長も出席されますので。」


「わかった。陽輝、松井、紹介する。」


「えっ?」


「………秘書として紹介する。」



思わず漏れた返事に、眉間に皺を寄せて私を振り返る副社長に頷いた。
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