幼馴染は関係ない
21話
竜生は私に対して、妹や娘が彼氏を連れてきたら反対したくなる感情を持っているのではないかと思っていた。
だけど、本気で私と新君の付き合いを否定している・・・。

どうして竜生は私を認めてくれないの?
新君の彼女だと言っても、似合っていない。と信じてもらえず、結婚を考えていると言えば、身の程知らずだと思われる。
私の事を何も知らない人が、外見だけを見てそう言うのなら我慢できる。
だけど、私を産まれた時から知っている竜生にそう言われるという事が、私にとってどれほど傷つく事なのか分からないの?
私って、そんなに悪い人間かな?
私って、そんなに駄目な人間かな?
そこまで言われなる程、私は竜生に何かしたのかな?
と落ち込んでしまう。

分からない・・・ずっと、分からなかった。
竜生が私に対する態度を急に変えた理由が。

・・・小学入学頃から急に冷たくされた。
でも、月日が経つと、それはどうでもいい様に思えていた。
たまに家に来て話をするし、無視されたり危害を加えられることも無かったから。

だけど、それじゃいけなかったのかな?
ちゃんと、竜生が何を思い、私の何が不満なのか聞くべきだったのかな?
そうしていたら、新君との仲もこんな風に言われなくて、
「周りが何を言っても、花音と中元はお似合いだ」と笑ってくれたのかな?

私が涙を流していると、新君はそっと自分の方へ引き寄せ抱きしめてくれた。
新君の胸倉を掴んでいた竜生の手は下ろされている。

「花音・・・泣かないで」
新君の優しい声にただ頷いた。

「上尾君。 僕と花音が似合わないって思ってるのは、僕に花音を渡したくないからだよね?」
「・・・」
「花音の事が好きなんだね?」
新君は確認するようにハッキリとした口調で言った。
私は驚いて顔を上げる。
新君、何を言っているの? 竜生が私を好きだなんてあり得ない。

「俺は・・・花音が好きなんだ・・・」
とても小さな声で竜生は言った。
「え?」
竜生の方へ振り返る。
今にも泣き出しそうな竜生の表情・・・冗談でしょ!?
嘘だよね!?
私は声が出なかった。

「やっぱり・・・ずっと、花音の事を?」
新君が訊くと頷く竜生。
「な・・・なんで・・・」
私は驚き過ぎてなんて言っていいかわからない。

「初めて俺が告白されたって言った時、花音は凄く怒ってた・・・」
そうだったかもしれない。 自慢話にイラついた事を覚えている。
「女と一緒に歩いてる時、花音が切なそうに俺を見てた・・・」
竜生がそう言うと、新君の体がピクリと反応した。
「え? そんな事してない!」
「した! 家のマンション近くで俺と女が一緒の時あっただろ?
俺が女連れでお前に会ったのはあれ一回きりだから俺は覚えてる!」
・・・家の近くで? ああ、会った事ある。
でもその時、竜生を切なそうに見たって、何?
「あっ!? あの時って私・・・」
私が話しだそうとすると、新君は不安そうな表情をする。
私は少し笑って、
「竜生と彼女が仲良さそうで、羨ましかったの。
私も新君と近くにいられたらああやって一緒に居られるのにな~って・・・」
新君に言う。
「そうだったんだ?」
「うん」
「あの態度は俺を好きだからだと思ってた。
でも、中元のこと考えてたのか・・・」
竜生は今まで見たこともないくらしょんぼりとしていた。
「・・・そうだよ」

「ずっと、花音に付き合ってるヤツがいないから俺は・・・いつかって思ってた」
竜生が話を続ける。
「何言ってるのか意味がわからないよ。
あんなにずっと『お前なんて彼氏はできない』って馬鹿にしてきたのに」
「それは・・・」
「私が自分を好きそうだからいつか付き合ってやるって、同情してくれてたって言うの!?」
「違う! そういう事じゃない!」
「じゃあ何? 竜生はいつも綺麗で美人な彼女がいて、そういう人が好きなのに、なんで私を好きだなんて言い出すのよ!? おかしいでしょ!?」
からかうのはヤメテよ!
「俺は別にそいつらを好きだった訳じゃ・・・」
「彼女の事、好きじゃ無いって前にも言ってたよね・・・」
本当に最低だと思ったもの。
「お前が好きなんだって!」
「信じる訳ないでしょ!? どうしてそこまでして私と新君の仲を引き裂きたいの? 酷いよ」

「上尾君・・・もしも僕と花音が別々の道を歩き出す日がきても、花音が上尾君を選ぶことは無いよ」
急に新君が言った。
別々の道?・・・え?
「新君?」
「もちろん、僕が花音を手放すなんて考えてもいないけど、そういう事ではなくて。
もしも花音が僕と付き合って居なくても、上尾君を選ばないって言いたかったんだ」
「なんでだよ!?」
「花音の話を聞いていたらさ・・・上尾君て花音に何をしてきたの?
優しい言葉一つかけずにただ見栄張ってきたんじゃない?」
「・・・」
「そんな事をずっとされてた人を好きになる人っているのかな?」
「それでも、花音の近くで見守ってきたのは俺だ。 中元じゃない!」
竜生はまだ諦めないみたい。
・・・というより、私を好きだなんて本気で言っているの?
< 21 / 26 >

この作品をシェア

pagetop