幼馴染は関係ない
25話
マンションのエレベーターを下りると竜生が立っていた。
「っ!?」
私はビクッとしてしまう。
・・・一人で帰ってきてたら竜生に待ち伏せされてたって事!?

「上尾君、どうして来なかった?」
新君はとても冷静。
「・・・カッコ悪ぃだろ」
「そうだね? 上尾君の気持ち、みんな分かってたみたいだったから」
「っ!?」
驚いた表情の竜生。
「誰も僕と花音の事、祝福してくれなかったよ・・・・・・満足?」
新君が挑発的な台詞を吐く。
なんだか、いつもの新君じゃないみたい。
「そうやって、花音が友達から孤立すること狙ったの?」
え? 新君?
「僕が北海道に戻ってから、孤独になった花音を支えるのは自分だって思ってほくそ笑んでた?」
「新君、何言ってるの?」
私は新君を止めようとした。
いくらなんでもそんな事 竜生が考えているなんてあり得ないと思ったから。
「どうして答えてくれないの?
今だって、落ち込んだ花音を励まそうと待ってたんでしょ?
僕が一緒だったのは想定内?それとも想定外?」
「・・・」
無言の竜生。
「でも、花音は同級生との繋がりをそれ程大事だと思ってないみたいだよ?」
新君は笑った。
凄く意地悪い顔で・・・えええ!? どうしちゃったの?
「上尾君と自分が付き合う事を当たり前みたいに言ってくる友達とは距離を置きたいってさ」
新君がそう言うと、竜生は慌てて、
「そうなのか!? いつも俺にみんなの事訊いてきてたくらい大事だったのに!?」
「え?・・・友達の近況を知りたいって思って訊いてたけど・・・根本的に、自分から積極的に連絡取ろうとしてない時点で皆とはそれほど強い付き合いしてきてないなって思ったの・・・そういう関係でしかなかったから竜生との事も誤解させたんだと思うし」
そう私が言うと、竜生は俯く。
「今後もこんな風に花音を待ち伏せするの?」
「別に待ち伏せなんて・・・」
竜生は項垂れる。
「これが待ち伏せじゃ無くてなんなの? 花音のストーカーにでもなるつもり?」
ストーカー!?
「俺は花音が心配だっただけで!」
「そんな心配、二度としてくれなくていいから。
花音は、上尾君の気持ちばかりを花音に押し付ける友達とも、自分勝手な上尾君とも距離を取るんだって・・・意味分かるよね?」
「は?」
竜生は怪訝な顔。
「上尾君はもう 花音と幼馴染だったというご近所の人でしかないんだよ」
「何言ってんだよ!?」
「同級生の集まりに花音はもう参加しない。 上尾君と二人でも会わないんじゃ、上尾君はいつどこで花音と話をする気なの?」
「っ!?」
「友達との仲がこじれなければ、花音と一緒に友達との集まりに参加することがあったかもしれないのにね?
上尾君、また判断を間違ったんだよ」
新君が笑う。
・・・新君、どうしちゃったの!?
私は唖然として新君を見上げている。
「今日の集まりに上尾君は笑顔で参加して、『皆が誤解していただけで、自分と花音はただの幼馴染』と言えば、少なくとも花音と友達は気まずくなることは無かったのに」
「なんなんだよ!? 中元ってそんなキャラだったか!?」
「僕をどんな人間だと思っていても自由だけど、僕から花音を奪おうとする男に優しくする様な人間だと思ってるならそれは大きな間違いだよ。
僕は今日、上尾君が今後 花音に手を出せないくらい追い詰めてやるって覚悟で来たんだから」
「追い詰める・・・?」
竜生が訊き返した。
「そう、僕と花音は大人の関係で、花音のご両親も認めてくれている仲で、結婚まで考えてるって知らせるつもりで来た。
もちろん、上尾君が花音を好きではないって態度でいてくれたらそんな事言うつもりは無かったけど」
新君、最初から竜生に言うつもりだったの!?
私達に身体の関係があるという事をサラリと言ってしまった新君に驚いたけど、最初から竜生に教えるつもりだったんだ・・・。
「僕は花音の為なら、嫌な人間にもなれる・・・別に、誰にでも優しい人間なんかじゃないよ」
・・・そうか今日の新君は、私を失わない様に必死なんだ。
北海道に帰ってから、自分が見えない所で私が竜生に頼ってしまうのではないか?と不安に思っていた?
だから、自分らしくないそんな意地悪な言い方で竜生を牽制してるの?
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