奏でるものは~第1部~
入試も終わり、学校でも家でも少しノンビリと過ごした。
と、言っても合格してるのか、と気になり心からのんびりはできないところである。
入試から三日後。
「ただいま」
「お帰りなさい、これ…」
家に着くと、お手伝いの嶋さんが、大きな封筒を差し出してきた。
封筒を見ると凌凛館高校の文字。
合否通知、だと理解した。
嶋さんはいつも通りの笑顔のまま。
その場で封を切る気にならず、そのまま部屋に行った。
部屋でハサミを手に、封を切ると書類が見えた。1枚を取り出すと、合格通知、と書かれていた。
――やった
喜びか沸き上がる。
すぐ父に電話する。
私達家族しか知らない父の完全プライベート用携帯。
三回の呼び出し音の後
「もしもし?歌織か?」
と父が出た。
「はい。
お父様、合格しました」
「おお、そうか、良かったな。
今日は早く帰るから合格通知見せてもらうよ。
歩月にも伝えるよ」
と言ったとたん、電話口がガサガサなり、
「歌織、受かったのね、良かったわ」
どうやら一緒にいたらしい母が電話口で喋りだした。
「うん、ありがとう。
仕事中でしょ?」
というと、
「そんなことどうでもいいわ。
早く帰るから、待っててね」
と一方的に切れた。
――あ、切れた。
と思わず笑いながら携帯をみて、姉と兄と千奈美と美輝にメールをした。
それぞれおめでとう、と返信があり、
千奈美は、ちょっと淋しい、と複雑な気持ちも添えられていた。
美輝は、明日は放課後遊ぼう、と早速のお誘い。
明日が楽しみになった。
その晩は、兄以外の家族でお祝いと称して家でご馳走をたべ、入学に必要な書類を母に渡した。
そして、翌日はカフェでケーキを食べて、3人でお揃いのネックレスを買う女子会をした。