眠れぬ王子の恋する場所


「そういや、おまえ、なんで三ノ宮んとこで働いてんの? 正直、怪しそうな事務所だろ」
「え……ああ、そうですかね」

急に目が合ったことに対する動揺を隠すように笑うと、久遠さんが続ける。

「それにおまえ、真面目だし。もっとちゃんとした会社で働きそうなのに」
「あー……そうですね。三ノ宮社長に会う直前までは、きちんとした会社で働いてたんですけどね」

その会社を辞めた事情が事情なだけに苦笑いを浮かべていると、そこを指摘される。

「ふーん。辞めた理由は?」

触れて欲しくないところにダイレクトに触れてくる久遠さんに、眉を潜め無言の抗議をしてみるものの、じっと見てくる久遠さんには引く気はないようで……。

馬鹿にされそうだし嫌だなぁ……と思いながらも、口を開いた。

「社内恋愛してたんですけど、お金を貸して欲しいって頼まれたんです。で、断ったら根も葉もない噂を社内に流されて……居づらくなって気付いたら辞職願出してました」

もう随分昔の話に感じるけれど、あれからまだ一年も経たないのか……と気づき驚く。

元彼はまだあの会社で働いているんだろうか。
そう考えるとちょっと腹立たしい。

私からとった十五万円はいったい何に使ったんだろう。

「そのあと、部屋に置いておいたお金が盗まれて……どうにかしてまた就職しなきゃって出かけた先で、三ノ宮社長に声をかけられたんです」

カップの中の緑茶に視線を落とし「最初は、ヤクザかと思いましたけど」と笑うと、それまで黙っていた久遠さんがこちらをじっと見て言う。


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